野呂美帆 - Interview
July 11, 2026
鎌倉を拠点に活動するフォトグラファー・野呂美帆は雑誌や広告を中心に幅広く活動する一方で、ライフワークとして世界各地を訪れながら、その土地の自然や人々の暮らしを撮影しています。
この度、ギャラリーJohnでは8年ぶり2度目となる個展「南島の話」を開催いたします。2018年7月、ギャラリーJohnのオープンを記念して開催した個展は、野呂の南インドの写真展でした。今回は彼女がその当時から撮り続けてきた奄美大島を写した展示となります。
今回の個展に際して、その活動の原点と、旅を重ねながら世界を見つめ続ける野呂さんの眼差しについてお話を伺いました。

野呂さんが写真を取り始めたきっかけを教えてください。
高校生の時に、友達を使い捨てカメラで撮るのがとても好きでした。特段、写真部だった訳ではなく、とにかく日常の写真をたくさん撮ってアルバムにしたりもしていました。勉強よりは、そうやって何かを作ることが好きだったので、高校卒業後は大学ではなく専門学校に行き、写真を本格的に好きになっていきましたね。
高校時代は、『Zipper』や『CUTiE』などのファッション誌が流行っていた時代で、私の周りの友人もスタイリストやヘアメイクになりたい子も多かったんです。地元が三重だったこともあり、友人はみんな「東京に行きたい」という憧れも強かったのでその影響も大きかったと思います。
写真は日常の中の楽しみだったのですね。高校時代はどんな場所でどんな写真を撮っていたんですか?
学校の校舎が多かったですね。あとは、三重なので名古屋や大阪に買い物に出かけることも多く、出かけた先などでも撮りました。遊び半分でしたが、それこそスタイリストやヘアメイクになりたい子たちの作品撮りみたいなことをやってたこともあります。当時ビジュアル系がすごく流行っていたので、ビジュアル系が好きな子がコスプレしたのを撮ったこともよく覚えています。(笑)
_ワクワクする遊びですね、10代の時のそういった記憶は大切な財産ですよね。現在は旅の写真やライフスタイルにまつわる発信も多い印象があります。
そうですね。活動のベースにあるのは、アウトドアや旅なんだと思います。プライベートでも仕事でも、旅行先や、山で写真を撮るのが好きです。なので、自分の趣味と仕事の好みが合わさっている感じですね。
写真だけを仕事として考えると難しく感じることもあるんですけど、一つのツールとして捉えると、自分には丁度よかったんだなと感じますね。
なるほど、好きなことが仕事になっている軽やかさが素敵ですね。最初に旅の中で写真を撮り始めたのはいつごろだったのですか?
旅の写真を初めてちゃんと撮ったのは15年くらい前です。
地元の友達がバリ島で結婚式を挙げることになって「交通費は出せないけど、よかったら来る?」と誘ってくれて、せっかくなので中判のフィルムカメラを持って一人で行くことにしたんです。
その時に初めて、バリ島の街を歩きながらそこにいる人たちを撮っていたらすごく楽しかったんです。旅で写真を撮る素晴らしさを知ったのは、その経験が大きかったと思います。
実は、その数年前に姉とバリ島を訪れていた経験があったので、一度訪れた場所だし、写真も撮ってみたい気持ちがあったので、一歩踏み出すことができたんです。もし写真をやっていなかったら、一人で海外へ行くこともなかったかもしれません。
_ やはり写真の着眼点は「人」なのですね。野呂さんの作品からは、生活の息遣いを感じられるのがとても印象的だなと思っています。
確かに旅に行っても、いわゆる「絶景」みたいなものにあまり興味がないかもしれません。例えば、「ここからの朝日や夜景を撮るぞ!」と意気込んで、決まりきった撮り方をするのにはあまりそそられないというか、私が撮る必要性を感じにくいんです。
だったら、決まりきったものではなくて、何気ない瞬間の方が惹かれるものがある。そういう意味では「生活感」のようなものが滲んで見えるのかもしれません。
何気ない瞬間に惹かれるのですね。写真を撮るという行為と生活とが結びついている感じや、肩肘を張っていないスタンスは高校生の頃から一貫しているような感じがします。旅先については、どういう基準で選ばれているのですか?
なんか...圧倒されたいんですよ。(笑)
特に海外では、よく知られた観光地というよりは、自分の中であまりイメージがつかなくて世の中にもそこまで情報が出ていないような場所に惹かれますね。行ってみないと何があるのか分からない感じがワクワクします。例えば、ラオスなんかは最近すすめられて気になっています。ある程度の安全性は整っていて欲しいと思うのですが、その中であまり知られていないような場所に行きたいんですよね。
以前記事*にも書いたのですが、インドやスリランカに行った時がすごく良かったのでそういう考えになっていったのだと思います。
あと島も惹かれますね。
ギュッと凝縮されているような濃い独自の文化をすごく感じるので好きです。
私は5年くらい前に直島という島で住み込みで働いていたことがあります。やはり、野呂さんがおっしゃるように、島には凝縮された独特の文化や空気があることを肌で感じました。
そうなのですね!私もいったことがあります、犬島などにもいきました。
_犬島も、島の歴史を背景に現在はアートを通して新たな価値を生み出している場所ですよね。島にはそれぞれ固有の歴史があることを改めて感じます。
そうですね。島には、それぞれ外からは見えにくい歴史や背景がありますよね。だからこそ、その土地を訪れると、その場所が歩んできた時間に自然と興味を持つようになりました。今回johnで開催する個展では、奄美大島に数多く残る教会をテーマにしています。奄美大島も、さまざまな歴史的背景の中で十分な支援が行き届かない時代がありました。そうした中、1892年に最初の神父が島を訪れ、人々に仕事を与えたり、医療を整えたりしながら暮らしを支えたと言われています。人々は「キリスト教だから」というよりも、その人がもたらしてくれた暮らしや考え方に救われたのではないかと思っています。その結果として信者が増え、多くの教会が建てられるようになったと言われています。
そうだったのですね、そういった歴史は初めて知りました。そもそも野呂さんはなぜ奄美大島の教会を写真に撮り始めたのですか?
最初は私も歴史なんて全然知らなかったんです。ただ、単純に行ってみたいと思って行ったときに、現地で仲良くなった友達から「かわいい教会があるよ」と教えてもらい、実際に見たら、すごく素敵でした。そこから奄美には教会がたくさんあることを知って、その理由を調べ始めました。そうすると、その背景にある歴史が見えてきて。「この建物を記録しておきたい」という気持ちで撮るようになりました


それこそ今回の展示では奄美の教会をモチーフにされていますよね。これまでのお話ともつながると思うのですが、あらためて、このテーマで個展を開く意義はどこにあるのでしょうか。
今回の展示タイトルは「南島の話」です。「南島」という言葉は、参考にした本のタイトルに入っていた言葉を用いました。奄美の歴史を調べていくうちに思ったのは、「奄美だけの話ではない」ということでした。さっきお話ししたように、島にはそれぞれ固有の歴史がありますし、日本自体も島国です。島に限らず、閉ざされた地域や、周縁にある土地には、背負っている独自の歴史がありますよね。そういう場所があることを知ってもらうことや、「みんないろんな歴史を抱えてきたんだよね」と感じてもらえたらいいなと思っています。いろんな島にも、いろんな国にも、それぞれの歴史がある。だから今回は、奄美だけの物語ではなく、「南島」という少し広い視点で展示を考えました。とはいえ、暗い気持ちになってほしいわけではないんです。
_その感覚、すごく分かります。私もちょうど言葉を探していたんですけど、生命力というと違うかもしれませんが、歴史を重んじつつ、「今」をどうやって未来に繋いで生きていこうか、というか。日常は目まぐるしくて、目の前のことで一杯一杯になるけれど、少し目線を遠くに据えることができるような展示になるかもしれませんね。
まさにそんな感じです。私たちは今のことしか考えられないことも多いですけど、ずっと過去には、いろんな人が生きてきて、いろんな出来事があって、その積み重ねの上に今がある。もちろん、その真相や主観は、その時代を生きた人にしか分からないと思います。でも、残されている歴史を見ていると、「きっと大変だったんだろうな」と思うんです。どの時代も、人々はそれぞれ懸命に生きてきて、その積み重ねがあって今がある。そういうことに励まされることもあると思うんです。土地の数だけ歴史があるので、色んな場所の歴史に目を向けるきっかけとなったら良いですね。
展示に添える文章も、あまり暗いものにはしたくなくて、ずっと言葉を探しています。
もちろん歴史には大変な出来事もあります。だからこそ、写真自体はできるだけ軽やかに見てもらえたらいいなと思っています。その土地の風景に惹かれて、その先に「この場所にはこんな歴史があったんだ」と知るきっかけになれば、それが一番うれしいですね。
野呂さんのお話しを聞いていると色々な場所に出かけたくなってきます。野呂さんは写真を撮るために旅へ行くのか、それとも旅があるから写真を撮るのか。どちらなんでしょう?
どちらかと言えば旅がメインです。
写真を撮るために行くと「撮らなきゃ」という気持ちになってしまうので。
行きたい場所があって、その記録としてカメラを持って行く。あまり撮影を目的にしすぎると、自分が縛られてしまう気がするんです。だからまず、旅そのものを楽しみたいと思っています。
野呂さんにとって旅の魅力とは何ですか?
たくさんありますね。見たことのない景色や文化に出会えること。
海外でも国内でも、自分が知らない場所へ行って「知らないもの」に触れることが何より好きだなと思います。
*miho noro HPより:
南インド RunTrip:https://www.mihonoro.com/new-page-3
スリランカ &Travel:https://www.mihonoro.com/travel-2
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野呂美帆 写真展 「南島の話」 2026 / JUL 11 - 20, 2026
2026/ 7/11(土) - 7/ 20(月・祝)
11:00-19:00
展示詳細はこちら。

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